品質管理

なぜなぜ分析のテンプレ&実践チェックリスト

なぜなぜ分析とは?トヨタ式・再発防止の本質と「意味がない」を回避する考え方

なぜなぜ分析の定義:なぜ「5回」繰り返す必要があるのか?

Q. なぜなぜ分析とは何ですか?
A. 発生した問題に対して「なぜ?」を5回繰り返すことで、表面的な原因ではなく、その奥に潜む「真因(しんいん)」を突き止めるための手法です。 単にミスを指摘するのではなく、二度と同じ問題が起きない「仕組み」を作ることを目的としています。5回というのは目安であり、真の原因にたどり着くまで問いを重ねることが重要です。

トヨタ生産方式の歴史に学ぶ:カイゼン文化を創る問題解決術

なぜなぜ分析は、トヨタ自動車の元副社長、大野耐一氏によって体系化された「トヨタ生産方式(TPS)」の柱の一つです。もともとは製造現場で機械の故障や不良を防ぐために生まれましたが、現在はIT、医療、事務などあらゆる分野で活用されています。この手法の核心は「人を責めずに仕組みを責める」という姿勢にあり、現場の「カイゼン(改善)」を加速させる文化を創り出します。

失敗の典型例:「犯人探し」や「精神論」に陥らないための大原則

なぜなぜ分析が「意味がない」と言われる最大の原因は、分析が「個人への責任追及」にすり替わってしまうことです。「注意が足りなかった」「意識が低かった」といった精神論は解決策になりません。

  • 良い例: 「作業手順書が分かりにくく、読み間違いが起きやすい仕組みだった」

  • 悪い例: 「担当者の確認不足。今後は気を付けるよう指導した」 真因を「個人の資質」ではなく「管理体制やプロセスの不備」に見出すことが、成功のための大原則です。


【無料配布】今すぐ実務で使える「なぜなぜ分析テンプレート」と記入例

Excel・Miro・PDF対応:現場で使いやすいテンプレート集

効率的になぜなぜ分析を進めるには、フォーマットの統一が不可欠です。用途に合わせて、以下の3種類のテンプレートを活用することをおすすめします。

ツール 特徴・おすすめの場面
Excel(エクセル) 報告書として提出が必要な場合や、過去の履歴を一覧管理したい場合に最適。
Miro(ミロ) 複数人でオンライン会議をしながら、付箋形式でアイデアを出し合う際に便利。
PDF 現場に印刷して持ち込み、手書きでリアルタイムにメモを取りたい場合に重宝。

【実録】設備故障・品質不具合・ヒューマンエラーの記入例3選

具体的な記入イメージを持つことで、分析の精度は劇的に向上します。

  • 設備故障: 「ベアリングが焼き付いた」→なぜ?「潤滑油が不足していた」→なぜ?「給油ポンプが作動していなかった」→なぜ?「ストレーナーが詰まっていた」→なぜ?「清掃サイクルが設定されていなかった」

  • 品質不具合: 「異物混入が発生した」→なぜ?「防塵服の着用が不十分だった」→なぜ?「更衣室の鏡が割れていて確認できなかった」

  • ヒューマンエラー: 「入力ミスが起きた」→なぜ?「似た数字が並んでいて見間違えた」→なぜ?「入力画面のフォントサイズが小さすぎた」

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テンプレートを形骸化させないための社内運用ルールの作り方

Q. なぜなぜ分析の結果が共有されず、同じミスが別の部署で起きてしまいます。どうすればいいですか?
A. 分析結果を「個人の記録」にせず、「組織の共有資産(システム)」として登録する仕組みを作りましょう。
誰でも過去のトラブル事例を検索できる環境を作ることで、組織全体の学習能力が高まります。テンプレートを用意しただけでは、次第に形骸化してしまいます。「分析が必要な条件(例:損害額◯万円以上、または再発事案)」を明確に定め、分析結果を必ず周知・共有するフローを構築してください。

プロが教える「正しいなぜなぜ分析」5ステップの実践手順

1. 事象の特定:思い込みを排除し「事実」を定義する

最初のステップは、起きた事象を客観的に定義することです。「機械が壊れた」ではなく、「3号機のメインモーターが過熱により停止した」というように、5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を用いて具体的に記述します。

2. 要因の展開:MECE(漏れなく・ダブりなく)を意識した分岐

「なぜ?」と問う際は、原因が複数考えられる場合に枝分かれさせて検討します。この時、MECE(ミーシー:漏れなく・ダブりなく)を意識することで、思考の抜け漏れを防ぎます。

3. 論理の検証:論理の飛躍を防ぐ「逆読み(〜だから〜)」テクニック

分析の精度をチェックする最も簡単な方法が「逆読み」です。

  1. 上から下へ「Aが起きた。なぜ?Bだったから」と読む。

  2. 次に、下から上へ「Bだった。だからAが起きた」と読み直す。 ここで論理が繋がらない、あるいは飛躍していると感じる場合は、間の「なぜ」が不足しています。

4. 真因の特定:自社で「管理可能」な原因まで掘り下げる

「景気が悪かったから」「天候が不順だったから」といった自社でコントロールできない事象は真因とは呼びません。真因は必ず、自社のルール、設備、教育、プロセスなど、「自分たちの力で変更可能なこと」に着地させる必要があります。

5. 対策立案:精神論ではない「物理的・システム的な再発防止策」

導き出された真因に対し、再発防止策を立てます。「教育する」「周知する」といった行動だけでなく、**「治具を改良して物理的に入らないようにする」「システムを改修してエラーが出るようにする」**といった、人の意識に頼らない対策を優先します。

対策のレベル 分類 具体例 効果
レベル1(強) 物理的・排除 金型を非対称にし、逆向きには装着できないようにする。 (ミスが不可能になる)
レベル2(中) システム・検知 入力数値が異常な場合、エラーが出て保存できないようにする。 (ミスに気づける)
レベル3(弱) 人的・教育 注意喚起のポスターを貼る、朝礼で周知する。 (意識に依存する)

現場のリーダー必携!なぜなぜ分析実践チェックリスト

現場で活用できる実践的なチェックリストです。実施時に手元に置いて確認してください。

【事前準備】「現場・現物・現実」の三現主義に基づいたデータがあるか?

  • [ ] 現場に行き、現物を手に取って、現実を確認したか?

  • [ ] 発生当時のデータ(ログ、写真、作業記録)が揃っているか?

  • [ ] 現場の一次情報を知る作業者が参加しているか?

【実施中】「個人の責任」を問うていないか?「なぜ」が「責め」に変わっていないか?

  • [ ] 追求しているのは「人」ではなく「プロセス」や「仕組み」か?

  • [ ] メンバーが萎縮せず、率直に事実を話せる雰囲気か?

  • [ ] 「不注意」「忘れた」といった心理的要因で分析を止めていないか?

【終了後】その対策で「誰がやっても再発しない」状態を作れるか?

  • [ ] 対策は「注意喚起」だけで終わっていないか?

  • [ ] 手順書やマニュアルの更新は計画に含まれているか?

  • [ ] 対策を実行した結果を確認する期限が決まっているか?


【事例集】製造現場からパワハラ等の組織課題、非製造業への応用まで

ヒューマンエラーの深掘り:個人の能力ではなく「仕組み」を疑う

ヒューマンエラーが起きた際、「なぜその人は間違えたのか?」という問いをさらに深掘りします。

  • 「ベテランなら分かるはず」という前提がなかったか?

  • 「似たようなスイッチが隣り合わせ」になっていなかったか? ミスを誘発する「環境の不備」を見つけ出すことがヒューマンエラー対策の極意です。

組織課題・パワハラ問題への適用:法的・倫理的配慮と公平な進め方

パワハラなどの組織課題になぜなぜ分析を適用する場合、プライバシーの保護に最大限配慮する必要があります。

  1. 事象: 指導の過程で過度な叱責が行われた。

  2. なぜ?: 管理者が目標未達に対するプレッシャーを感じていた。

  3. なぜ?: 管理者へのサポート体制がなく、一人で責任を負う仕組みだった。 このように、個人の性格ではなく、**「マネジメントの構造的欠陥」**として分析を進めます。

IT・マーケティング・教育:製造業以外での成功事例と活用のコツ

IT業界ではシステム障害の分析に、マーケティングでは「なぜこの広告のクリック率が低いのか?」といった分析に活用されています。どの業界でも共通するのは、「可視化されたデータ」に基づいて「なぜ」を繰り返すことです。


まとめ:なぜなぜ分析を組織の力に変え、生産性を最大化するために

本記事では、なぜなぜ分析を単なる「報告書のための作業」から、真の再発防止と組織改善のための強力なツールに変える方法を解説しました。なぜなぜ分析を成功させる最大のコツは、個人の責任を追及するのではなく、仕組みや環境の中に潜む真因(ルートコーズ)を論理的に特定し、物理的・システム的な対策を講じることにあります。

今すぐ実行できるステップとして、以下の3点を確認してください。

  1. テンプレートの導入: 記入形式を統一し、論理の飛躍(逆読みチェック)をルール化する。

  2. チェックリストの活用: 三現主義に基づいた事実確認ができているか、個人攻撃になっていないかを常に確認する。

  3. ナレッジの共有と標準化: 分析して終わらせず、その結果を全社的なマニュアルやシステムに落とし込む。

しかし、現場で日々発生する不具合やミスのすべてを手書きや表計算ソフトだけで管理し、再発防止の徹底を確認し続けるには限界があります。

そこで、分析結果を確実に組織の資産に変えるソリューションとして、クラウド型生産管理システム「鉄人くん」をおすすめします。「鉄人くん」は、製造現場のあらゆるデータをリアルタイムに一元管理できるだけでなく、不具合情報やその対策、標準化された作業手順をシステム上で共有することが可能です。

「鉄人くん」を活用すれば、なぜなぜ分析で導き出した「仕組みによる解決」を、そのままデジタルなワークフローやマニュアルとして現場に定着させることができます。場当たり的な対応をなくし、高品質なものづくりを継続できる強靭な組織作りを、「鉄人くん」と共に始めてみませんか。

また、トライアルキャンペーンも実施していますので、生産管理システムの導入を検討してみたいとお考えの方は、こちらからお気軽にお問合せ・ご相談ください。


参考文献・出典

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