「品質管理」と「品質保証」。ものづくりの現場で当たり前のように使われる言葉ですが、この二つの違いを正確に説明できるでしょうか?「どちらも品質を良くするための活動でしょ?」となんとなく理解しているものの、いざ説明しようとすると混同してしまう方も少なくありません。
この記事では、そんなあなたのために「品質管理(QC)」と「品質保証(QA)」の決定的な違いを、図や身近な例え話を交えながら、誰にでも分かるように徹底解説します。この記事を読めば、両者の役割と関係性が明確になり、仕事の解像度がグッと上がるはずです。
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まず結論!品質管理(QC)と品質保証(QA)の決定的な違いとは?
細かい説明の前に、まずは結論から。二つの違いをひと言で表すなら、焦点を当てている場所と時間軸が全く異なります。
【QC】完成した製品が“仕様通りか”を検査・管理する活動
品質管理(Quality Control: QC)の主な役割は、できあがった製品や製造途中の部品が、定められた基準や仕様(サイズ、重量、性能など)を満たしているかを検査することです。
もし基準を満たさない不良品があれば、それを取り除き、市場へ流出するのを防ぎます。いわば、下流工程(製品側)に焦点を当て、問題が起こった後に発見・対処する活動です。
【QA】顧客が満足する品質を“保証する”ための仕組み作り・活動全般
品質保証(Quality Assurance: QA)の役割は、そもそも不良品を発生させないための「仕組み」を考え、それを構築・維持管理することです。
製品の企画段階から、設計、製造、出荷、さらにはアフターサービスに至るまで、すべてのプロセス(工程)を管理し、顧客が満足する品質を保証します。こちらは上流工程(プロセス側)に焦点を当て、問題を未然に防ぐための活動と言えます。
【一覧表】品質管理と品質保証の違いが一目でわかる比較表
二つの違いをより明確に理解するために、それぞれの特徴を一覧表にまとめました。
身近な例で解説!レストランに例えるとわかるQCとQAの関係
専門用語が続くと難しく感じるかもしれません。そこで、私たちの身近な「レストラン」に例えてみましょう。
- 品質保証 (QA) の仕事 👨🍳 最高の料理を提供するための**「仕組み作り」**全般を担当します。
- 美味しい料理のレシピを開発する
- 誰が作っても味がブレないよう、調理マニュアルを作成する
- 食中毒などを防ぐため、厨房の衛生管理ルールを定める
- 新鮮で安全な食材を仕入れるため、信頼できる業者を選定する
- 品質管理 (QC) の仕事 🍽️ できあがった料理がお客様に出せる状態かを**「検査」**します。
- スープの味見をして、レシピ通りの味かチェックする
- 見本写真と比べて、盛り付けが正しいか確認する
- 料理が冷めていないか、提供直前の温度をチェックする
このように、**QAが作った仕組み(レシピやルール)**の上で、QCが個々の製品(料理)をチェックしているのです。どちらが欠けても、お客様を満足させることはできません。
品質保証という大きな傘の中に品質管理がある
レストランの例からも分かる通り、品質管理と品質保証は対立するものではなく、密接に関連しています。より正確に言うと、「品質保証(QA)」という大きな活動の傘の中に、「品質管理(QC)」という具体的な活動が含まれている、とイメージすると分かりやすいでしょう。
品質保証(QA)が目指す「顧客満足」を実現するための一つの重要な手段として、品質管理(QC)による検査活動があるのです。優れた品質保証の仕組みが構築されていれば、品質管理の負担は減り、逆に品質管理で得られた検査データは、品質保証の仕組みをさらに改善するための重要な情報となります。
【仕事内容編】品質管理と品質保証、それぞれの具体的な業務と求められるスキル
では、実際の企業ではそれぞれどのような仕事をしているのでしょうか。具体的な業務内容と、求められるスキルの違いを見ていきましょう。
品質管理(QC)の主な業務内容
- 各種検査の実施: 部品の受け入れ検査、製造途中の工程内検査、完成品の出荷検査など。
- 品質データの分析: 検査で得られたデータを「QC7つ道具」などの手法で分析し、不良の傾向や原因を探る。
- 検査基準書の作成・改訂: 何を、どのように、どの基準で検査するかを定めたマニュアルを作成する。
- 検査機器の管理・校正: 検査で使う測定器が常に正確な値を示すよう、定期的にメンテナンスや校正を行う。
品質保証(QA)の主な業務内容
- 品質マネジメントシステムの構築・運用: ISO9001などの規格に基づき、全社的な品質管理のルールを構築し、運用する。
- 製造プロセスの設計・監査: 不良品が出にくい製造工程を設計したり、ルール通りに運用されているかを定期的にチェック(内部監査)したりする。
- 顧客クレーム対応と再発防止: 顧客からのクレームの原因を調査し、二度と同じ問題が起きないよう対策を講じ、仕組みに反映させる。
- 仕入先(サプライヤー)の品質指導: 部品などを供給してくれる取引先の品質レベルが基準を満たしているかを確認し、指導する。
それぞれに向いている人、求められるスキルの違い
品質マネジメントを支える代表的な手法と考え方
品質管理と品質保証の活動は、世界中の製造業で培われてきた様々な手法や考え方によって支えられています。
品質改善の基本サイクル「PDCA」
Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のサイクルを回し続けることで、継続的に業務を改善していく考え方です。品質管理・品質保証のあらゆる活動の基本となります。
品質管理の具体的な分析手法「QC7つ道具」
品質管理の現場で、データを整理・分析するために用いられる代表的な7つの手法です。パレート図や特性要因図、管理図などがあり、これらを使うことで問題の原因を客観的に突き止めることができます。
国際的な品質マネジメント規格「ISO9001」
質の高い製品やサービスを継続的に提供するための「品質保証の仕組み(品質マネジメントシステム)」について定めた国際的な規格です。この規格の認証を取得することは、顧客からの信頼を得る上で非常に重要です。
全社で取り組む「TQM(総合的品質マネジメント)」とは?
TQM(Total Quality Management)は、品質保証の考え方をさらに発展させたものです。品質部門だけでなく、経営層から開発、製造、営業、管理部門に至るまで、組織の全員が参加して継続的に品質向上に取り組む経営手法を指します。
まとめ:QCとQAの連携で、顧客に信頼されるものづくりを実現しよう
本記事では、混同しがちな「品質管理(QC)」と「品質保証(QA)」の違いについて、定義から具体的な仕事内容、そして両者の関係性までを詳しく解説しました。
重要なポイントを改めて整理します。
- 品質管理(QC)は、製品が仕様を満たしているかをチェックする「検査」が中心の活動。
- 品質保証(QA)は、そもそも不良品を発生させないための「仕組み作り」が中心の活動。
- 品質保証(QA)という大きな枠組みの中に、品質管理(QC)が含まれる関係にあります。
この二つは対立するものではなく、車輪の両輪です。効果的な品質管理活動と、それを支える品質保証の仕組みが連携することで、初めて顧客が満足し、信頼してくれる製品を生み出すことができます。
そして、精度の高い品質管理・品質保証活動の土台となるのが、「いつ、誰が、何を、どのように作ったか」という正確な製造履歴データです。万が一、不良品が発生した際に、その原因を迅速に特定し、プロセスのどこに問題があったのかを改善するためには、信頼できるデータが不可欠となります。
特に、小規模な製造業の現場では、こうしたデータの管理が課題となりがちです。そこでおすすめしたいのが、クラウド型生産管理システム「鉄人くん」です。鉄人くんは、小規模製造業の現場に特化し、受注から製造、出荷までの工程を「見える化」します。正確な製造実績データを蓄積することで、トレーサビリティを確保し、品質問題の原因究明と再発防止(品質保証)を強力にサポートします。
品質管理・品質保証のレベルを一段階引き上げるために、まずはその土台となる製造プロセスの管理から見直してみてはいかがでしょうか。
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参考文献・出典
- 日本産業標準調査会(JISC)『JIS Q 9000:2015 品質マネジメントシステム−基本及び用語』— https://www.jisc.go.jp/