設備や工具、備品、資材……製造業では日々さまざまな「物」が使われます。これらの管理が曖昧だったり、属人化していたりすると、「どこにあるか分からない」「過剰に買ってしまった」「足りないのに気づかなかった」といった問題が頻発し、業務効率やコストに大きな影響を及ぼします。
そこで重要になるのが「物品管理」です。この記事では、製造業における物品管理の基本から、管理すべき対象、現場でよくある課題、管理の具体的方法、そしてデジタルツールを活用した改善方法までを網羅的に解説します。さらに、業務改善の起点として物品管理を見直すためのステップや、最終的な業務全体の効率化を視野に入れた実践的なノウハウをご紹介します。
物品管理とは?製造業における基本的な考え方
物品管理とは、業務で使用する「すべての物品(資産・備品・消耗品など)」を適切に保管・把握・補充・廃棄する一連の活動を指します。製造業では、物品管理の対象は幅広く、生産設備や治工具、部品、作業服、消耗品、予備品など多岐にわたります。
物品管理の目的は大きく以下の3つです。
- 必要なときに必要な物品が使える状態にしておくこと
- 過不足のないよう、適正な数量・コストで管理すること
- 紛失・無断使用・劣化・老朽化などを防ぐこと
これができていないと、「探し物で時間を浪費する」「買ったのにまた買う」「保守部品がなくて機械停止」といった損失が発生します。特に製造業では、生産設備や工具の不備は生産性に直結するため、物品管理の精度が業績に大きな影響を及ぼすのです。
管理対象となる物品の分類と特徴
物品管理といっても、対象は多種多様です。以下のように分類しておくと、それぞれに適した管理方法を選びやすくなります。
1. 固定資産(設備・機械・什器など)
- 高額・長期使用が前提
- 資産管理として台帳管理が必要
- 減価償却やリース契約情報との連携も
2. 工具・治具類
- 作業者間で共有されるケースが多い
- 紛失や劣化、使い回しが問題に
- 誰がいつ使ったかを記録する運用が望ましい
3. 備品・消耗品(文房具・手袋・洗剤など)
- 使用頻度が高く、補充・在庫管理が重要
- 在庫が切れると業務が止まる可能性あり
4. 保守部品・予備品
- 必要なときにすぐ使えることが重要
- 多くが「見えない在庫」となりやすい
- 経年劣化・使用期限も考慮が必要
それぞれの物品に応じて、「どの程度厳密に管理すべきか」「どの部署が責任を持つのか」を明確にし、管理基準や運用ルールを定めることが第一歩です。
物品管理の課題と失敗例〜ありがちな「3つのパターン」
パターン1:誰が何を持っているか分からない
- 工具や備品が共用になっていて所在が不明
- 使用後の返却がされない、持ち出しの記録がない
パターン2:在庫はあるが使えない
- 使用期限切れや破損、規格違いの部品が残っている
- 管理台帳上では存在していても、実際には使えない
パターン3:記録と実物が合わない
- Excelや紙で管理していて、更新が追いつかない
- 現物と帳簿に乖離があり、棚卸しで混乱する
これらは現場のストレスや作業ロスを招き、全社的には在庫コストの増大やトラブル対応コストの増加という形で跳ね返ってきます。見落とされがちですが、物品管理の乱れは「小さなムダの積み重ね」であり、早期のテコ入れが必要です。
効率的な物品管理のポイントと改善ステップ
1. 「誰が・何を・いつ・どこで」使うのかを見える化
まずは現場での利用状況を把握するため、物品の持ち出し・返却・補充の記録を取る仕組みを整えましょう。バーコードやICタグを使えば、自動化も可能です。
2. 台帳を「使える情報」に整理
管理台帳は「書いてあるけど誰も見ていない」状態に陥りがちです。物品の分類・配置・数量・写真・状態・担当者など、必要最低限の情報を集約し、定期的に更新しましょう。
3. 棚卸しの仕組みをルーチン化
少なくとも年1回の棚卸しを実施し、現物と記録を突き合わせることが大切です。棚卸しの負担を減らすためには、日常的に在庫数を維持管理するしくみが有効です。
4. 適正在庫を定める
消耗品などについては、使用頻度と補充タイミングを踏まえて「発注点」や「最低在庫数」を設定することが重要です。感覚に頼らない運用ルール化が、安定運用につながります。
DXによる物品管理のスマート化〜手書き・Excelからの脱却
物品管理のミスやムダは、情報の分断・更新の遅れ・属人化が原因です。これを解決するには、デジタルツールの活用が最も効果的です。
1. バーコード/QRコードによる管理
- 持ち出し・返却・補充をスキャンで記録
- 誰がいつ使ったかをトレースできる
2. クラウド型管理システムの導入
- 部門をまたいでリアルタイムに情報共有
- スマホやタブレットで現場から操作可能
3. IoT・センサーとの連携
- 備品棚に重量センサーを設置し、自動で残数を把握
- 閾値を下回ると自動通知・発注といった自動化も可能
現場のDXを進めるなら、物品管理から始めるのは有効です。比較的スモールスタートがしやすく、投資効果も実感しやすいため、全社的な改善の足がかりにもなります。
まとめ:物品管理を整えることは「現場の基盤」づくり
物品管理は一見地味ですが、製造業における現場力・業務効率・コスト管理に直結する重要テーマです。探し物・重複購入・誤使用といった「小さな損失」を見逃さず、ルール化とシステム化で解決していくことが、強い現場をつくる第一歩です。
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